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Project
Instagram投稿コンテンツ制作
Client
暁学園/保育園
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Release
2025年4月
Highlights
- プラットフォームの制約を逆手に取った導線設計 フィード投稿は「認知」、ストーリーズ(ハイライト)は「行動(リンク)」と役割を明確に分担。Instagram特有の技術的制約を正確に理解し、ユーザー体験を損なわずGoogleフォームへスムーズに導く戦略的な情報フローを構築。
- 季節性と多様性を両立させるテンプレート構築 毎月開催という継続性を重視し、月ごとの季節モチーフと多様な親子動物を組み合わせた可変的デザインを採用。効率的な運用(スケーラビリティ)を可能にしながら、フォロワーに常に新鮮な視覚体験を提供する「仕組み」を実装。
- スマホ閲覧に特化した視覚情報のセーフティ設計 プレビュー時の1:1トリミングやUI要素の重なりを緻密に計算した、厳格なセーフティゾーン設計を実装。UDフォントの採用とモバイルに最適化したライティングにより、小さな画面でも「0.5秒で伝わる」高精度なタイポグラフィを具現化。
- フォロワー零から申し込みへ繋げる「動機付け」の具現化 アカウント開設直後のフォロワー不在の状態から、実際に複数組の申し込みという具体的な成果を創出。単なる「告知」を超え、地域の子育て世代の期待と安心を醸成し、確実なアクションへと誘導するデザインの有効性を証明。
STORY
奥州市の認可保育園「暁学園」様。入園前のお子様とその保護者を対象とした体験入園事業「カンガルー広場」――全国各地の自治体や保育園で実施されている地域子育て支援事業です。その名が示すように、親子のふれあいを大切にする温かな取り組みです。今回の依頼は、この事業への参加者を募るためのInstagram投稿制作。申し込みの受付には、Googleフォームを採用しました。一見すると、ありふれたSNS運用の一環に思えるかもしれません。
しかし、この制作の背後には、Instagramというプラットフォームの技術的制約を正確に理解した設計が必要でした。SNS投稿とは、ただ情報を発信することではありません。それは、プラットフォームの仕様という制約の中で、ユーザー体験を最大化する仕組みを構築する設計思考なのです。
プラットフォームの制約を理解する
クライアントからの要望は、一見シンプルに見えて、実は多層的でした。単純に「申し込みを増やしたい」というだけではなかったのです。
まず、「カンガルー広場という取り組みそのものを知ってもらうこと」。そして、「暁学園でもカンガルー広場を実施していることを知ってもらうこと」。その上で、「実際に申し込んでもらうこと」。
これは、三層構造の課題でした。全国的に展開されている地域子育て支援事業ではあるものの、その存在自体が、地域においてまだ十分に認知されていなかったのです。
私が最初に行ったのは、Instagramというプラットフォームの技術的制約を前提とした戦略設計でした。
プラットフォーム・アーキテクチャに基づいた導線設計
Instagram運用において定石とされる技術的制約――これらは、SNS制作に携わる者にとっては基礎知識です。しかし、クライアントのビジネス目的を達成するためには、この「当たり前」をいかに戦略的な必然性として昇華させるかが、プロの仕事の分水嶺となります。
本プロジェクトでは、以下の仕様を戦略的な設計図として再定義しました。
- フィード投稿(通常投稿)にはリンクを設置できない
- ストーリーズとハイライトにはリンクを設置できる
- フィード投稿とストーリーズではアスペクト比が異なる(フィード投稿は4:5などの縦長、ストーリーズは9:16のフルスクリーン)
- 投稿をストーリーズにシェアすると、アスペクト比の違いから上下が切れる
これらの制約を前に、経験の浅いデザイナーは「リンクが貼れないから不便だ」と考え、見た目の良さだけで作ってしまいがちです。結果、文字が切れたり、リンクが踏まれなかったりという事故が起こります。
しかし、制約をユーザー体験のフェーズごとに分解し、最適化することこそが、プロの設計です。
そして、ここから導き出された戦略は明快でした。
フィード投稿とストーリーズを、それぞれ最適化した別個のフォーマットとして設計する。
単純に「投稿をストーリーズにシェアする」という安易な運用ではなく、それぞれのフォーマットが持つ特性を最大限に活かす――これが、このプロジェクトにおける最初の設計判断でした。
三層構造の課題
次に必要なのは、真の目的を明確にすることです。この課題は多層的でした。
第一層 : 事業そのものの認知形成
「カンガルー広場」という地域子育て支援の取り組みが存在することを、地域の子育て世代に届ける。これは全国各地の自治体や保育園で実施されている事業ですが、その存在自体がまだ十分に知られていませんでした。
第二層 : 実施主体の認知形成
暁学園がこの取り組みを実施していることを知ってもらう。
第三層 : 行動への誘導
その存在を知った人の中から、「参加してみたい」と思った人を、スムーズにGoogleフォームへと誘導し、申し込みを完了させる。
この三つの目的は、同時に満たさなければなりません。事業の認知だけでは意味がなく、実施主体の認知だけでは不十分で、誘導の仕組みだけあっても人は来ない。認知と行動を一つのシステムとして統合すること――これが、解くべき課題でした。
二つのキャンバスに異なる役割を与える
Instagramのフィード投稿とストーリーズは、同じプラットフォーム内にありながら、まったく異なる性質を持ちます。それぞれの特性に合わせた最適化が必要です。
認知装置としての設計
フィード投稿は、アカウントのプロフィールに永続的に残り、情報を伝える役割を果たします。しかし、リンクを設置できないという制約があります。ここで採用した戦略は、複数枚投稿による情報の階層化です。
1枚の画像にすべての情報を詰め込めば、文字は小さくなり、視認性が低下します。そこで、情報を複数枚に分割し、スワイプによって段階的に情報を開示していく構造にしました。
さらに、Instagramのフィード投稿にはプレビュー時の表示領域という、もう一つの制約があります。投稿サイズは縦長(アスペクト比4:5が一般的)ですが、タイムライン上のプレビューでは正方形(1:1)でトリミングされます。
この制約に対し、重要な情報は正方形の中央領域に収めるというセーフティゾーン設計を実装しました。タイトル、日時、場所――これらの最優先情報は、プレビュー時点で必ず視界に入るように配置する。これにより、ユーザーがタップする前の段階で「何の投稿か」を瞬時に理解できるのです。
リンク誘導装置としての設計
一方、ストーリーズを作成した理由は明確です。ハイライトにリンクを設置するためです。
Instagramの仕様として
- フィード投稿にはリンクを設置できない
- ハイライトにはリンクを設置できる
- ハイライトに追加できるのはストーリーズだけ
つまり、Googleフォームへの申し込みリンクを設置するには、ストーリーズ形式で作成し、それをハイライトに保存する必要がありました。
ストーリーズには独自の技術的制約があります。セーフティゾーン――画面上部14%、下部20%、左右各6%の領域には、テキストを配置してはいけません。なぜなら、この領域にはInstagramのUI要素(プロフィールアイコン、投稿時刻、スワイプアップバーなど)が重なるからです。
この制約を踏まえ、縦長キャンバス(アスペクト比9:16)の中央部に、視線を集約させるレイアウトを構築しました。そして、リンクステッカーを配置し、Googleフォームへの導線を明確に示す。フィード投稿が「認知」を担い、ストーリーズ(ハイライト)が「行動」を担う――この役割分担が、システム全体の効率を最大化するのです。
三つの設計方針
Instagramというプラットフォームの制約を理解し、フォーマットごとの最適化を行った――ここまでは、情報を届けるための「仕組み」の設計でした。
次に必要なのは、何を、どのように伝えるかというデザインの方向性です。
このプロジェクトで伝えるべきメッセージは明確でした。保育園という信頼できる場所で、カンガルー広場という親子のふれあいの取り組みが、毎月継続的に開催されている――この事実を、地域の子育て世代に届けること。
このコンセプトに基づき、以下の三つの設計を行いました。
- 季節性の実装
- 毎月開催という継続性を、季節のモチーフで表現する
- キャラクター戦略
- カンガルーと多様な親子動物で、親子のふれあいを視覚化する
- スマホで読ませる設計
- 小さな画面でも伝わる、ライティングとタイポグラフィ
以下、それぞれの設計について説明します。
持続的運用への設計思想
カンガルー広場は、単発のイベントではありません。毎月開催される継続的な取り組みです。
この「毎月」という時間軸に対し、季節性というパラメータを組み込んだテンプレート設計を行いました。
- 4月は桜
- 5月はこいのぼり
- 6月はあじさい
季節のモチーフを視覚要素として取り入れることで、毎月の投稿が単なる「同じ告知の繰り返し」ではなく、「その月ならではの特別な体験」として認識されます。
これは、デザインにおけるスケーラビリティの実装です。一度デザインシステムを構築すれば、毎月モチーフを差し替えるだけで、継続的に新鮮なコンテンツを生成できる。効率性と持続性を両立させた設計思想です。
そして、季節のモチーフは単なる装飾ではありません。それは、時間の経過を可視化する記号です。「先月は桜だったけど、今月はこいのぼりだ」――ユーザーの記憶の中で、カンガルー広場は「季節とともに移り変わる、継続的な活動」として定着していきます。
視覚的アイデンティティの構築
「カンガルー広場」という名称には、明確な象徴性があります。親子のふれあい――母親のお腹の袋で子どもを育てるカンガルーは、その理念を体現する完璧なシンボルです。
そこで、カンガルーをメインキャラクターとして採用し、視覚的アイデンティティの中核に据えました。しかし、カンガルーだけでは表現の幅が限られます。
そこで導入したのが、多様な親子動物のバリエーション展開です。
- パンダの親子
- キリンの親子
- カルガモの親子
これらのキャラクターを月ごとに登場させることで、「親子のふれあい」というテーマを多角的に表現しました。動物の種類が変わっても、「親子」という共通項は保たれる。これは、一貫性と多様性の共存というデザインシステムの理想形です。
画風の整合性という品質管理
キャラクターイラストには、フリー素材と有料素材を組み合わせて使用しました。ここで重要なのは、画風の統一です。
背景とキャラクター――これらが視覚的に調和していなければ、一枚の画面の中で「違和感」が生まれます。違和感は、プロフェッショナルな印象を損ない、信頼性を低下させます。
そのため、素材選定の段階で「背景とキャラクターの画風が似ているもの」という厳格な基準を設定しました。これは品質管理のプロセスです。
ライティングとタイポグラフィ設計
カンガルー広場を知らない人に、詳細を伝える必要がある――しかし、Instagramのユーザーはほぼ全員がスマートフォンで閲覧します。スマホの小さな画面で長文は読まれません。
そこで、なるべく端的な言葉で、短いフレーズで伝えることに徹しました。
これはデザインだけでなく、ライティング(コピーライティング)の領域です。どうしても説明が必要な情報を、最小限の文字数で、最大限の明確さで伝える。
さらに、タイポグラフィ設計にも細心の注意を払いました。
- 見出しは大きく
- 本文にはUDフォント(ユニバーサルデザインフォント)を使用
- 視認性を最優先
見た目の美しさだけでなく、どうしたら内容を伝えられるかにこだわりました。ごちゃごちゃした文章は、読めない以前に、読む気にさせません。
情報設計、ライティング、タイポグラフィ――これらすべてが統合されて初めて、スマホという小さな画面で「伝わる」投稿が完成するのです。
デザインの質が証明されたプロジェクト
このプロジェクトは、Instagramアカウント開設と同時に投稿する、フォロワー数ゼロからのスタートでした。
それでも、複数組の親子から申し込みがありました。
これは、デザインが多くの人の目に留まり、「参加してみたい」と思わせる魅力を持っていたことの証明です。
制約の中で最適解を設計する
完成したInstagram投稿は今、暁学園のアカウントで、その役割を果たしています。フィード投稿とストーリーズ、二つのフォーマット。カンガルーを中心とした動物の親子たち。季節ごとに移り変わるビジュアル。そして、スマホで読める短く明確な文章。
それは、ただ「見た目が可愛い投稿」ではありません。Instagramというプラットフォームの技術的制約を理解し、その制約の中で、認知と行動を統合する仕組みとして設計されたものです。
デザイナーの仕事は、クライアントが口にした要望をそのまま形にすることではありません。プラットフォームの仕様という制約の中で、クライアントのビジネス目的を達成するための最適解を設計することです。
プラットフォームの仕様の理解。真の目的の三層定義。フォーマット別の最適化。季節性という時間軸の実装。キャラクター戦略による感情設計。スマホで読ませるライティングとタイポグラフィ――
これらすべては、「地域の子育て世代に、カンガルー広場という温かな場所の存在を届け、実際に足を運んでもらう」という、ただ一つの目的のために統合されています。
そして、フォロワーゼロの状態からスタートしたにもかかわらず、複数組の親子からの申し込みという成果を生み出しました。
暁学園の「伝えたい」という想い。それを、プラットフォームの制約という現実と、デザインという視覚言語で翻訳し、成果につながる「仕組み」として実装する。
地域を行き交う人々のスマートフォンに表示されるInstagram投稿。その一枚一枚に、見えない設計思想が宿っています。
GALLERY
PHASE
- 要件定義
- クライアントの要望を多層的に分析し、真の課題を定義しました。表面的な集客目標の背後にある認知形成の必要性、プラットフォームの技術的制約、ターゲット層の情報接触環境を検証し、戦略方針を確立しました。
- 情報設計
- 複数枚投稿による情報の階層化を設計しました。ユーザーの視線誘導と情報の優先順位を整理し、スワイプによる段階的な情報開示構造を構築。タップ前の段階で興味を喚起し、スワイプで詳細を伝えるUX設計を実現しました。
- フォーマット最適化
- フィード投稿とストーリーズ、それぞれの特性に合わせた最適化を行いました。フィード投稿は認知と情報伝達に特化し、ストーリーズはハイライトへのリンク設置を目的とした導線設計を実装。アスペクト比の違い、プレビュー時のトリミング、セーフティゾーン、UIとの干渉など、プラットフォームの物理的制約に対応した技術的設計を行いました。
- コンセプト策定
- 伝えるべきメッセージの情緒的・戦略的方向性を策定しました。ブランドの信頼性、ターゲットへの親しみやすさ、継続的な取り組みの印象といった要素を統合し、視覚的メッセージの基本方針を定義しました。
- ライティング
タイポグラフィ - スマートフォンでの閲覧を前提とした文章設計を行いました。詳細な説明が必要な情報を、端的な言葉と短いフレーズで伝えるコピーライティングを実施。見出しの大きさ、UDフォントの採用、視認性を最優先したタイポグラフィ設計により、小さな画面でも内容が伝わる構造を実現しました。
- ビジュアル設計
- 継続的な運用を前提としたビジュアルシステムを設計しました。配色ルール、レイアウトテンプレート、要素の配置規則を策定し、定期的な投稿に対応できるスケーラブルな構造を構築。ブランドアイデンティティの一貫性を保ちながら、効率的に更新できるシステムを実現しました。
- 素材選定・品質管理
- フリー素材と有料素材を組み合わせ、視覚的な統一性を維持しました。各要素間の画風の調和を厳格に管理し、一枚の画面内での違和感を排除。プロフェッショナルな印象と信頼性を担保する品質基準を設定しました。
- 制作・納品
- 設計に基づき、フィード投稿用とストーリーズ用の画像データを制作しました。適切なアスペクト比、解像度、ファイル形式を整備し、クライアントが即座に投稿できる状態で納品しました。


