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Project
玉里振興会青年部 – チームウェア
Client
玉里振興会青年部 / 地域団体
Release
2018年8月
Highlights
- 地名の由来と地域背景を編み込んだ紋章デザイン 地名「玉」から着想した円環と、地域を構成する七つの地区を「七星」として図案化。3×3のグリッドに文字とアイコンを配した論理的デザインにより、地域のアイデンティティを鮮烈に視覚化。
- 活動シーンに最適化した視覚効果の追求 ターコイズの生地色に対し、補色となる黄色をロゴに採用。実写合成による着用シミュレーションを経て背中への大胆な配置を決定し、屋外活動でも遠目から一目で認識できる高い視認性と一体感を実現。
- 予算と品質を両立させる印刷手法の選定 制作枚数や生地色、デザインの色数を考慮し、版代不要で単色デザインに最適な「カッティング圧着」を選択。光沢・蛍光シートによる鮮やかな発色を活かし、限られた予算内でクオリティを最大化するディレクション能力を発揮。
- 当事者の想いと論理的な必然性を掛け合わせた提案 単なる文字の羅列ではなく、配置の一つひとつに意味を持たせた「語れるデザイン」を構築。出身地を知る者としての深い洞察をプロの視点で形にすることで、メンバーが誇りを持てる一着を具現化。
STORY
岩手県奥州市江刺玉里――私の出身地から届いた一通の依頼。それは、地域の未来を担う「玉里振興会青年部」のチームウェア制作という、特別な意味を持つプロジェクトでした。地域を知る者だからこそデザインできる”らしさ”を形にする挑戦が始まりました。
出身地だからこそ、込められる想い
依頼主は奥州市江刺玉里の「玉里振興会青年部」。出身地からの依頼――それだけで、このプロジェクトは他のどの仕事とも違う特別なものになりました。
チームウェアのベースとなるのは、鮮やかなターコイズ色のTシャツ。このチームウェアに合わせて、ロゴのデザインも一から制作することになりました。地域振興会という組織の性質上、求められたのは団結と調和を象徴するデザイン。そして何より、着用する青年部の皆さんが誇りを持てるものでなければなりませんでした。
「玉」という名から生まれた円環のデザイン
デザインの核となったのは、地名にある「玉」の一文字です。ここから直感的に「球(丸)」というモチーフを導き出しました。円は、古来より円満や団結、そして途切れることのない循環を象徴する形です。地域が一つにまとまり、その活力が次世代へと受け継がれていく様子を視覚化するために、この正円のアイコンをベースに据えました。
そして、玉里を語る上で欠かせない「七つの地区」という背景。この地域を構成する七つの地区を、私は七つの星としてデザインに組み込みました。七つの球が揃うことで願いを叶える物語のように、七つの地区が一つになり、地域の未来を切り拓いていく。そんな願いを、このシンボルに込めています。
8つの文字を完結させる、3×3のグリッド
「玉里振興会青年部」という名称は、合計で8文字です。これを最も安定感のある3×3のグリッドに配置するため、あえて文字ではない「第9のピース」として七つ星のアイコンを加えました。
文字と図形が等間隔で並ぶこの配置は、伝統的な家紋のような安定感と、現代的なグラフィックとしての力強さを併せ持っています。あえて右上の一角にアイコンを配したことで、視覚的なリズムが生まれ、遠くからでも一目で「玉里」のアイデンティティが際立つ、必然性のあるレイアウトを完成させました。
着用イメージから導く、最適な配置
ロゴが完成しても、それをTシャツのどこに、どのサイズで配置するかで、チームウェアの印象は大きく変わります。Photoshopを使って着用イメージを作成し、複数のパターンを検証しました。
胸元、袖、そして背中――様々な配置を検討した結果、最終的に採用したのは背中に大きく配置するというレイアウト。チームウェアとして、遠目からでも存在感を放ち、背中で語る力強さを表現しました。
ロゴの色は、ターコイズに映える鮮やかな黄色を採用。補色関係にあるこの2色の組み合わせは、高い視認性と印象的なコントラストを生み出します。
配置とカラーの設計思想
- 背中への大胆な配置:チームウェアとしての存在感と一体感
- 黄色×ターコイズ:補色による高い視認性と印象的なコントラスト
- 着用イメージの検証:実際の使用シーンを想定した最適化
予算と品質を両立させる、印刷方法の選択
チームウェア制作において、デザインと同じくらい重要なのが印刷方法の選定です。今回のプロジェクトで検討したのは、インクジェット、シルクプリント、フィルム転写、カッティング圧着などの印刷方法。それぞれに特徴があり、最適な選択は条件によって変わります。
ベースのTシャツがターコイズ色という点も考慮が必要でした。最近最も主流のインクジェットプリントは、フルカラー印刷が可能で版も不要ですが、透明度の高いインクを使用するため、濃色生地ではホワイト印刷が必要となりコストがかかります。シルクプリントは美しい仕上がりが期待できますが、版を作る必要があり、ロット数が少ない場合はコストが跳ね上がります。フィルム転写は版不要でフルカラー対応が可能です。
一方、カッティング圧着は単色専用の手法ですが、版が不要で、特殊なシートをカットして熱で圧着するため、少ロットでもコストを抑えられます。さらに、カッティングシートには光沢や蛍光など様々な種類があり、非常に鮮やかな発色が特徴です。
今回のデザインは黄色の単色で表現できるため、カッティング圧着を採用。予算を抑えつつ、カッティングシートならではの鮮やかな発色で、ターコイズと黄色のコントラストを際立たせることができました。
印刷方法の選定理由
- カッティング圧着の採用
- 版不要で少ロットに対応、単色デザインに最適
- 鮮やかな発色
- 光沢・蛍光シートによる際立つ視認性
- ロット数と予算の最適化
- 条件に応じた最良の選択
- 業者連携
- 印刷自体は専門業者に依頼し、品質を確保
版の有無、ホワイト印刷の有無、ロット数――これらの要素を総合的に判断し、クライアントの予算と希望に最適な提案を行いました。ロット数が多くなれば版を作ってシルクプリントした方がコストを抑えられますが、今回のような少ロットかつ単色デザインの場合は、カッティング圧着が最良の選択でした。デザイナーの仕事は「描く」ことだけではありません。限られた予算と条件の中で、クライアントにとっての最良の選択肢を提示することも、大切な役割だと考えています。
地域の未来を背負う一着
完成したTシャツは、今、玉里の空の下で青年部の皆さんの「顔」となっています。夏の強い光の下、流しそうめんなどの活動に励むメンバーの背中で躍動する七つの星。ターコイズの青に映える黄色の紋章は、玉里を構成する七つの地区が一つに繋がっている姿そのものです。
出身地への愛着と、デザイナーとしての論理。その両方が結実したこのプロジェクトは、私にとっても、故郷と自分を繋ぎ直す大切な物語となりました。このウェアを着た青年部の皆さんが、今日も地域のために活動する姿。それこそが、このデザインの真の完成形です。
GALLERY
PHASE
- ヒアリング
- クライアントの活動内容、チームウェアの使用シーン、求めるデザインの方向性を聞き取り。ロゴに求められる要件と制約条件を明確化しました。
- コンセプト設計
- ヒアリング内容をもとに、ブランドの本質を言語化。視覚表現の方向性を定義しました。
- 素案作成
- デザインコンセプトを視覚化する複数の方向性を、Illustratorで制作しました。
- プレゼンテーション
- 各案のコンセプト・意図・使用イメージを説明。クライアントとの対話を通じて、最も想いに合致するデザインを選定しました
- カラー設計
- ベースカラーに対し、視認性と印象的なコントラストを実現する配色を設計しました。
- 着用イメージ検証
- 選定されたロゴをTシャツに配置する複数パターンを、Photoshopで作成。様々な配置を検証し、最適な配置を決定しました。
- 印刷手法の選定
- 複数の印刷手法を比較検討。制作枚数、予算、生地色を考慮し、最適な印刷手法を提案・決定しました。
- 業者連携
- 印刷業者との調整を実施。印刷仕様確認、色校正、納期調整など、制作進行を管理しました。
- データ納品
- 印刷用データを業者に納品。印刷工程の品質管理を行い、完成したチームウェアの最終確認を実施しました。



